タイで就労ビザ以外に働けるビザはあるか|タイ法人から報酬を受け取れるか

タイで外国人が働く場合、通常はノンイミグラントBビザとワークパーミットを取得します。

しかし近年は、デジタルノマド、高度専門人材、投資家、スタートアップ起業家などを対象に、通常の就労ビザ以外でも、一定条件のもとでタイ滞在中の仕事が認められる制度が整備されています。

ただし、ここで注意すべきなのは、「タイに滞在しながら仕事ができる」ことと、「タイ法人から報酬を受け取れる」ことは同じではないという点です。

ここでいう「タイ法人からの報酬」とは、タイ法人からの給与、業務委託料、顧問料、役員報酬など、労務や役務提供の対価として受け取る金銭を指します。株主として受け取る配当や、単なる投資収益とは区別して考える必要があります。

この記事では、2026年6月時点の情報をもとに、通常の就労ビザ以外でタイに滞在しながら働ける主な制度について、「タイ法人から報酬を受け取れるか」を中心に整理します。

主要ビザ別:タイ法人から報酬を受け取れるか

ビザ・滞在資格 主な対象 タイ法人から報酬を受け取れるか ワークパーミット 整理
DTV:デスティネーション・タイランド・ビザ デジタルノマド、リモートワーカー、フリーランサー、タイ・ソフトパワー活動参加者 原則不可 不要 タイ国外の雇用主・顧客に対するリモートワーク向け。タイ法人から給与、業務委託料、顧問料などを受け取る働き方には向かない。
LTR:Work-from-Thailand Professionals 海外企業に雇用され、タイからリモート勤務する高所得者 不可 発給対象外 海外企業のためにタイから働くカテゴリー。タイ雇用主がいないため、ワークパーミットは発給されない。
LTR:Highly-Skilled Professionals タイの対象産業・研究機関等で働く高度専門人材 必要。ただし簡素化 タイ法人・タイ機関で働くことが可能。LTRシステム経由でデジタルワークパーミットを取得する。
SMART Visa BOI等が認証する対象産業の専門家、投資家、経営者、スタートアップ起業家 可。ただし認証された企業・事業に限る 原則不要 認証されたタイ企業・対象産業で働く場合、ビザ自体に就労権限が含まれる。一般的なリモートワーカー向けではない。
ノンイミグラントO:タイ人配偶者等 タイ人配偶者・家族と滞在する外国人 可。ただしワークパーミット取得が必要 必要 Oビザ自体は家族滞在のためのビザ。就労する場合は、別途ワークパーミットが必要。タイ人配偶者がいる場合、会社側要件が緩和されることがある。
タイ・プリビレッジ/旧エリートビザ 長期滞在・富裕層向け 原則不可。ただしFlexible Plus Program等の条件を満たす場合は可 通常は不可。特別枠ではNon-Bビザへの切替とワークパーミット取得が必要 通常のThailand Privilege Cardは長期滞在用であり、就労資格ではない。ただし、高額投資を前提とするFlexible Plus Program等では、PE VisaをNon-B Visaへ切り替え、ワークパーミットを取得して就労できる場合がある。
リタイアメントビザ 50歳以上の退職者 不可 原則不可 退職者の長期滞在用。タイで働くための資格ではない。
学生ビザ・観光ビザ・ビザ免除入国 学業・観光・短期滞在 不可 不可 就労目的ではない。タイ法人から報酬を受ける仕事には使えない。

DTVは「タイ法人から稼ぐビザ」ではない

DTV(Destination Thailand Visa)は、5年間有効のマルチプルエントリービザで、1回の入国につき180日滞在でき、タイ国内でさらに1回、最大180日の延長が可能とされています。

対象者には、デジタルノマド、リモートワーカー、外国人専門人材、フリーランサーなどが含まれます。また、ムエタイ、タイ料理、医療などのタイ・ソフトパワー関連活動も対象として案内されています。

一方で、DTVはタイ法人に雇用されるためのビザではありません。ワーケーションのカテゴリーは、タイ国外の雇用主・顧客に対して、タイからリモートで仕事をする人を想定した制度です。

そのため、タイ法人から給与、業務委託料、顧問料などを受け取る場合は、DTVではなく、通常のBビザ+ワークパーミット、または条件を満たすLTR、SMART Visa、Oビザ+ワークパーミットなどを検討する必要があります。

DTV申請時の資金証明

DTV申請では、50万バーツ以上の残高証明が求められます。近年の運用では、単なる残高証明だけでなく、過去3か月の取引明細書などを求められるケースがあるため、申請前に余裕をもって資金証明を準備しておく必要があります。

日本から申請する場合、在福岡タイ王国総領事館の案内では、財務証明として「500,000THB以上の預金残高証明書」が求められ、例として「過去3か月の取引明細書」等が挙げられています。

DTVのソフトパワー枠について

DTVのソフトパワー枠では、ムエタイ、タイ料理トレーニング、医療治療などが例示されています。一方、タイ語学学校については、少なくとも公的な例示には含まれておらず、DTVの対象として扱われない運用が見られます。

語学学校への通学を理由にDTVを申請する場合は、申請前に、申請先の在外公館または専門家へ確認することをおすすめします。

DTVはe-Visa申請が基本

2025年1月1日以降、タイのe-Visa制度は世界的に拡大され、在外公館経由のビザ申請は原則としてe-Visaポータルを通じて行う形に移行しています。

日本からDTVを申請する場合も、e-Visaシステム上で申請し、在福岡タイ王国総領事館の案内では、申請料は52,000円とされています。

また、タイ国内で180日延長する場合の手数料は、通常の滞在延長手数料として1,900バーツが目安です。ただし、DTVは比較的新しい制度であり、申請地や時期により運用が変わる可能性があります。

LTRビザはカテゴリーによって結論が違う

LTRビザ(Long-Term Resident Visa)は、最長10年の長期滞在が可能な制度です。ただし、タイ法人から報酬を受け取れるかどうかは、カテゴリーによって異なります。

Work-from-Thailand Professionals

Work-from-Thailand Professionalsは、海外企業に雇用され、タイからリモート勤務する人向けのカテゴリーです。

このカテゴリーでは、タイ雇用主が存在しないため、ワークパーミットは発給されません。したがって、タイ法人から給与や業務委託料を受け取る働き方には使えません。

BOIの告示により、Work-from-Thailand Professionalsの要件は一部緩和されています。従来よりも利用しやすくなり、海外雇用主の売上基準の引き下げ、上場企業の完全子会社の対象化などが反映されています。

所得要件は、原則として直近2年間の平均年収が8万米ドル以上です。条件を満たす場合は、年収4万米ドル以上8万米ドル未満でも申請可能とされています。

Highly-Skilled Professionals

Highly-Skilled Professionalsは、タイの対象産業、研究機関、高等教育機関、政府機関などで働く高度専門人材向けのカテゴリーです。

このカテゴリーでは、タイ法人またはタイ国内機関で働くことができ、LTRシステム経由でデジタルワークパーミットを取得します。

主な優遇措置として、次のようなものがあります。

優遇措置 内容
長期滞在 最長10年の滞在資格
ワークパーミット デジタルワークパーミットの取得が可能
雇用要件 通常の「外国人1人につきタイ人4人雇用」要件が免除
90日レポート 通常の90日報告が年1回報告に緩和
税制優遇 Highly-Skilled Professionalsについては個人所得税率17%の優遇
対象分野 自動車、電子、デジタル、医療、バイオ、物流、航空、ロボティクスなどのターゲット産業

SMART Visaは、認証された対象産業で働くための制度

SMART Visaは、タイ投資委員会(BOI)等が関与する制度で、タイのターゲット産業に関わる専門家、投資家、経営者、スタートアップ起業家などを対象としています。

SMART Visaの特徴は、認証された企業・事業で働く場合、原則として別途ワークパーミットを取得しなくてもよい点です。つまり、条件を満たせば、タイ法人から報酬を受け取って働くことが可能です。

ただし、SMART Visaは一般的なデジタルノマドや、単に海外企業の仕事をタイから行うリモートワーカー向けの制度ではありません。タイ法人との雇用契約、タイでの業務アサイン、または外国企業とタイ企業とのサービス契約など、タイ側との明確な関係が必要になります。

タイ人配偶者のOビザは、働けるがワークパーミットが必要

タイ人配偶者など、タイの家族と滞在するためのノンイミグラントOビザは、家族滞在のためのビザです。

このビザ自体に就労権限が含まれているわけではありません。そのため、タイ法人から報酬を受け取って働く場合は、別途ワークパーミットが必要です。

ただし、タイ人配偶者がいる外国人を雇用する場合、通常のワークパーミット要件に比べて、会社側の資本金要件やタイ人雇用人数の条件が緩和されることがあります。

一般的には、通常「外国人1名につきタイ人従業員4名・払込資本金200万バーツ」が目安となるところ、タイ人配偶者がいる場合は「タイ人従業員2名・払込資本金100万バーツ」に軽減されるケースがあります。

ただし、実際の運用は会社形態、業種、職務内容、申請地、担当官庁の判断によって変わるため、個別確認が必要です。

タイ・プリビレッジは原則として就労資格ではないが、例外がある

タイ・プリビレッジ(旧タイランドエリートビザ)は、長期滞在や生活利便性を目的とした会員制プログラムです。通常のThailand Privilege Cardは、タイで働くための就労資格ではありません。

そのため、一般的なタイ・プリビレッジ会員が、その資格のままタイ法人で働いたり、タイ法人から給与・業務委託料・顧問料などを受け取ったりすることはできません。

ただし、例外として、Flexible Plus Program等の条件を満たす場合には、PE VisaをNon-B Visaへ切り替え、ワークパーミットを取得してタイで働ける場合があります。

この制度は、一定額以上のタイ国内投資を前提とする特別枠です。一般的な長期滞在者向けの就労解禁ではなく、高額投資を伴う限定的な制度として理解する必要があります。

したがって、タイ・プリビレッジについては、単純に「就労不可」とだけ書くと不正確です。一方で、「タイ・プリビレッジなら働ける」と理解するのも誤りです。

正確には、「通常は就労不可。ただし、Flexible Plus Program等の条件を満たし、Non-Bビザとワークパーミットを取得する場合は、例外的に就労できる場合がある」と整理するのが適切です。

就労目的では使えないビザ

以下のビザ・滞在資格は、長期滞在や観光、学業のためのものであり、就労目的では使えません。

ビザ・滞在資格 整理
リタイアメントビザ 退職者向けの滞在資格であり、就労は認められていない。
学生ビザ 学業目的の滞在資格であり、就労目的では使えない。
観光ビザ 観光目的の滞在資格であり、就労目的では使えない。
ビザ免除入国 短期滞在・観光目的であり、就労目的では使えない。

結論

タイで通常の就労ビザ以外に働ける選択肢はあります。

しかし、タイ法人から報酬を受け取れるかという観点では、次のように整理できます。

結論 該当する主なビザ
タイ法人から報酬を受け取れる LTR Highly-Skilled Professionals、SMART Visa、ノンイミグラントO+ワークパーミット
条件付きでタイ法人から報酬を受け取れる タイ・プリビレッジ/旧エリートビザのFlexible Plus Program等。高額投資、Non-Bビザへの切替、ワークパーミット取得が前提
タイ法人からの報酬は不可。海外向けリモートワーク向け DTV、LTR Work-from-Thailand Professionals
就労目的では使えない リタイアメントビザ、学生ビザ、観光ビザ、ビザ免除入国

特にDTVは人気がありますが、「タイに住みながら海外の仕事をする」ためのビザであり、「タイ法人から報酬を受け取って働く」ためのビザではありません。

また、タイ・プリビレッジについても、通常は就労資格ではありません。Flexible Plus Program等の特別枠により就労できる場合はありますが、これは高額投資とNon-Bビザ・ワークパーミット取得を前提とする限定的な制度です。

タイ法人から報酬を受け取る場合は、通常のBビザ+ワークパーミット、または条件を満たすLTR、SMART Visa、Oビザ+ワークパーミットなどを検討する必要があります。

参考情報

本記事は2026年6月時点の公表情報および実務上の一般的な整理に基づいています。ビザ・ワークパーミットの要件や運用は変更されることがあるため、実際の申請前には、申請先の在外公館、タイ入国管理局、労働省、BOI、または専門家に最新情報をご確認ください。



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