タイの会社の株主名簿(บอจ.5)は、会社が作って登記官に提出するもので、記載は「正しいと推定される」にとどまります(民商法典第1141条)。
一方で、手続きに不備のある株主総会の決議を取り消してもらうには、決議の日から1か月以内に裁判所へ訴えなければなりません(第1195条)。
知らないうちに増資や株主の入れ替えが決まっていた、ということを防ぐには、株主名簿と登記簿謄本を定期的に取り寄せて確かめることが大切です。
株主名簿は、どんなときに変わるのか
株主名簿の記載が変わるのは、主に次のようなときです。
- 株式が譲渡されたとき
- 増資で新しい株式が割り当てられたとき
- 相続などで株主が替わったとき
株主名簿の写しは、会社が作って登記官に送るものです。
その記載が正しいかどうかに争いがあれば、最終的には裁判で決着をつけることになります。
不備のある総会の決議は、1か月で争えなくなる
招集の手続きや決議の方法が法律や附属定款に反していた場合、取締役か株主は、裁判所に決議の取り消しを求めることができます(第1195条)。
ただし、期限は決議の日から1か月以内です。
知った日から数えるのではありません。
招集通知が届かないまま総会が開かれ、増資などが決まっていたとしても、気づいたときに1か月が過ぎていれば、手続きの不備を理由には争えなくなります(最高裁判決 130/2548)。
開かれていない総会なら、1か月の期限はかからない
一方、総会が実際には開かれておらず、議事録が偽りだった場合は、第1195条の取り消しの問題ではないとされ、1か月の期限はかかりません(最高裁判決 2362/2520、1661/2534)。
開かれていない臨時総会の議事録に基づく登記について、取り消しを求めることが認められた例もあります(最高裁判決 7926/2557)。
| どんな場合か | 争い方 | 期限 |
|---|---|---|
| 総会は開かれたが、招集や決議の手続きに不備があった | 決議の取り消しを求める(第1195条) | 決議の日から1か月 |
| 総会が開かれておらず、議事録が偽りだった | 決議に効力がないことを主張する | 1か月の期限はかからない |
ただし、期限がなくても、裁判で争っている間に、新しい取締役が会社を代表して契約を結ぶなど、取り返しのつかないことが起きるおそれがあります。
株主名簿を書き換えた取締役が、刑事罰を受けた例
代表権のある取締役が、株主名簿でほかの株主の9万株を自分の名義に書き換え、その写しを登記官に提出した事件があります。
この事件では、取締役に禁錮6か月(執行猶予1年)と罰金4万バーツの判決が確定しました(最高裁判決 3607/2565)。
書き換える前の名簿の記載が正しいと推定され、取締役はそれを覆せませんでした。
年に1回は、株主名簿と登記簿謄本を確かめる
子会社や合弁会社については、毎年、定例株主総会が終わってしばらくしてから株主名簿と登記簿謄本を取り寄せ、次の点を確かめることをおすすめします。
- 株主の顔ぶれと持ち株数が、自社の記録と同じか
- 資本金が変わっていないか
- 取締役と、署名の条件が変わっていないか
ただし、1か月の期限に間に合わせるには、年に1回の確認だけでは足りないこともあります。
合弁の相手との関係が難しくなったときなど、気になることがあれば、すぐに確かめることが大切です。
株主が増えると、株主総会の採決にも影響します(タイの株主総会は「挙手で1人1票」が原則)。
株主名簿・登記簿謄本、取り寄せます
弊社では、登記簿謄本・監査済み決算書・株主名簿の3点を、タイ商務省事業開発局(DBD)の電子認証付きPDF(原本の公式な写し)のまま、原則2営業日でお届けします。
費用は3点まとめて13,200円+消費税です。
附属定款も、オプション(3,000円+消費税)で取り寄せます。
→ タイ法人の登記簿謄本・監査済み決算書・株主名簿の取得代行
関連記事:
気になるあの会社の「タイ側の株主」は誰?
タイの株主総会は「挙手で1人1票」が原則
最低限調査しておきたいタイ取引先の情報 その2 代表取締役
タイの定例株主総会で決議しなければならない事項
実際の対応は、タイの弁護士にもご確認ください。
2026年10月26日時点の情報です。