タイの会社には、日本の「代表取締役」のような役職はありません。
誰が、何人で署名すれば会社を代表できるかは、登記された「署名の条件」で決まります(民商法典第1111条)。
条件に合わない署名で結んだ契約は、原則として、会社が追認しなければ会社を拘束しません(第823条・第1167条)。
契約の前には、名刺の肩書きではなく、登記簿謄本で署名の条件を確かめることが大切です。
署名の条件は、登記されている
会社を登記するときは、取締役の名前に加えて、どの取締役が、何人で署名すれば会社を拘束するかを届け出ます(第1111条)。
この内容は、登記簿謄本(หนังสือรับรอง)の「署名の条件」の欄で確かめられます。
「MD」や「社長」の肩書きがあっても、署名の条件に当てはまらなければ、1人で会社を代表できるとは限りません。
署名の条件の、よくある形
| 形 | 書き方の例 |
|---|---|
| 1人で署名 | 取締役のうち1名が署名し、会社の印を押す |
| 2人の連名 | 取締役のうち2名が共同で署名し、会社の印を押す |
| 特定の取締役を含む連名 | 取締役Aと、ほかの取締役1名が共同で署名し、会社の印を押す |
会社の印を押すことが条件に入っている会社もあれば、入っていない会社もあります。
条件に合わない署名は、原則として会社を拘束しない
取締役と会社、取引の相手との関係には、代理の規定が当てはまります(第1167条)。
代理人が権限なく、または権限を超えてしたことは、本人(会社)が追認しなければ本人を拘束しません(第823条1項)。
会社が追認しないときは、署名した人が自分で相手に責任を負います。
ただし、相手が権限がないと知っていた場合は別です(第823条2項)。
また、会社の言動によって相手が権限があると信じる理由があった場合などには、正式な権限がなくても会社が責任を負う例外もあります(第821条・第822条)。
追認されて有効になった例
登記された署名の条件が「特定の取締役が、ほかの取締役1名と共同で署名し、会社の印を押す」だった会社で、条件に合わない2人の取締役が契約に署名した事件があります。
この事件では、会社があとで取締役会の議事録で追認していたため、契約は会社を拘束し、署名した取締役は個人として責任を負わないとされました(最高裁判決 6324/2552)。
追認がなければ、結論は変わっていた可能性があります。
契約の前に確かめたいこと
- 新しい登記簿謄本で、今の取締役と署名の条件を確かめたか
- 署名する人が、その条件に当てはまっているか
- 会社の印が条件に入っていれば、印が押されているか
- 条件に合わないときは、会社が承認していることを書面で確かめたか
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